お葬式 僕らは、短い夏を駆けぬける。

閉じる
このページを見ている人が購入している商品

それでも僕はお葬式を選ぶ

航空会社のサイトでチケットを買う作業の最後に画面にでてスクショしたQRコードを「あのぉ~…これぇ~…」とアホみたいな声量で言いながら空港の係員のお姉さんに見せる

お姉さんは柴犬に催眠術をかけるかのように優しい声でチェックインの自動券売機を案内して操作してくれた
「窓際の席が空いておりますが?」
ときかれる
俺には
「(あんた飛行機乗り慣れてないから窓際で鼻水たらしてワクワクしながら外を見て離陸した瞬間に「イエーーーーーイ!!!!!!!!キンタマふわってなるぜーーーーーーーーーー!!!!」とプリングルスの筒をふりまわし横の知らんおっさんとハイタッチしながらしょんべんを撒き散らしたいのだろう?それならば幸運にも)窓際の席が空いておりますが?」

にきこえた

ふざけるな
俺はもう31だし飛行機なんて何度も搭乗しとる
ほら、飛行機に乗ることを『搭乗』ってゆうのも知っとる

中学のスキー合宿は神戸から北海道へ飛んだし
親に海外に連れてってもらったこともあるし
ハタチのときは「俺はよくいるハタチのやつとは違うんだ!!!!」と言いながらよくいるハタチのやつみたいにインドで一人旅した勇猛果敢な歴史がある
もう窓際など興味はない
むしろ長崎のジジイの葬式だというのに旅行気分まるだしですでにビールを2缶もあけたからスイスイしょんべんにいける通路側のほうがいいんだ

「悪いな、姉ちゃん。通路側にしてくれや」

離陸の瞬間、俺は

「イエーーーーーイ!!!!!!!!キンタマふわってなるぜーーーーーーーーーー!!!!」とプリングルスの筒をふりまわし横の知らんおっさんとハイタッチしながらしょんべんを撒き散らしたい強い衝動をグッとこらえていた

窓際のおっさん越しに見る空の世界は何度みてもやはり「イエーーーーーイ!!!!!!!!キンタマふわってなるぜーーーーーーーーーー!!!!」とプリングルスの筒をふりまわし横の知らんおっさんとハイタッチしながらしょんべんを撒き散らしたくなる

窓際にすりゃよかった

ほんでキンタマ痛い

まだ若くガリガリだった頃に母親に買ってもらった背広はスタイリッシュな細身につくられており

10キロ以上太った今はズボンのチャックがギリギリしまるぐらいで飛行機の座席に座るとキンタマが強く圧迫された

ふわっとさせたり圧迫させたり

キンタマには申し訳ないきもちでいっぱいだ

キンタマにだけは年賀状を書こうと思う

ジジイが死んだのは昨日の夕方だった

俺が幼少のころ父親が癌で入院して母も家を空けることが多かったのでジジイが俺と姉の面倒をみていた

もちゃもちゃしたジジイだったので世の中のすべてのもちゃもちゃした男性の存在がなんとなく許せないバリバリ思春期の姉とよく衝突していた

まだピカチュウよりも頭が悪かった俺もなんとなく姉に迎合してジジイに反発していた

大人になってから長崎に会いにいったときのジジイは昔よりさらにもちゃもちゃしており、電波のつながってない古い携帯電話(iモードとかのやつ)のゲームやカメラで遊んだり、カセットテープに自分の歌を録音して喜んでいたりしていて

80を越えても華道の先生を続けているしっかりしたババアに育てられている子供のようになっていた

幼少期の態度をうしろめたく感じていた俺はジジイの話を笑いながら聞き、やたら優しく接してもうライチュウより頭が良い大人であることをアピールした

その思い出も5年以上前のことで東京でミュージシャンをしながら売れる気配もまったく無く大学生や主婦と同じ時給でスーパーで働いてる俺には金がなく長崎に顔を見せに行く気は起こらなかった

それどころか昨日のバイトおわりに母親からきたジジイの悲報のLINE画面をなんだかわからないまま「あのぉ~…これぇ~…」とアホみたいな声量で言いながら店長に見せて「あ、じゃあ明日と明後日休みにしますね。」と言われてやっと(あ、そっか、俺は明日と明後日は長崎にいくのか。だから店長は明日と明後日休みにしてくれたのか。店長はやさしいなぁ。店長すきー。)とやっと飛行機に乗る決意が固まったぐらいだ

長崎空港に着いて大阪からきた姉と落ち会った

おっさんになった俺のことを姉はまだピカチュウより頭が悪い弟だと思っているふしがあり
昨日もググれば一撃で出てくる飛行機の予約サイトを弟はきっとググれないと判断してLINEで送ってくれた

姉に限らず女という生物の愛の量は狂気じみており男はそれを受け入れてアホになるしかない

晩年のジジイといっしょだ

ジジイの葬式はアホほど人が集まった

革靴がみつからず喪服にadidasの黒いスニーカーを履いていた俺は終止バカ孫まるだしでスニーカーを見られないように早歩きでウロウロしていた

90を越えた人間の葬式というのは悲しさよりもがんばって生きたねすごいねイエイという祝福ムードが強く九州のエネルギッシュなおっさんやおばはんたちはよくしゃべり笑っていた

人前に出るのが大好きな母親も「めちゃめちゃおもしろい喪主の挨拶の台本が書けた!!!!」とハイパー不謹慎なことをほざいていたがめちゃめちゃスベっていた

それでも火葬場でジジイが入った棺桶が機械で最期の場所へトーストみたいに吸い込まれていく瞬間はババアも母も姉ですら涙をこらえきれずにいた

俺は泣けなかった

そこまでこの人に関わってないような

俺はこの人に会いに行こうともせず暇があれば疲れて寝ていたから

泣く資格が無いように思えた

先程触れたようにババアは九州を牛耳る華道の先生をしており家の食器棚もキャンドゥの100円のやつではなく有名な陶芸家が作った総額何千万円ほどの醤油皿等でうめつくされているスペックも意識も高い系女子で

いいかげんな生き方をしている俺をなじる空気もありババアの目を避けて生きてきたが

ひさしぶりに会ったババアはジャンガリアンハムスターのように小さく震えていてややもうろくしており葬式の最中も俺をみて不思議そうな顔をして「だれやったかね?」とすっとぼけたことを言っていた

葬式のあとババアの家に泊まって朝起きてババアに「おはよう」と言うとババアは(だれこいつ!?ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!ヤバいって!!!!し
らんやつおるって!!!けーさつけーさつ!!!!けーさつに電話せんと!!!!!!!!)みたいな顔をしてどっかいった

何十年もあたりまえみたいに一緒にいた優しい人が死んだらどんなきもちなんだろう

長崎を立つ前にババアを少し抱き締めた感触は素手で7秒で殺せそうなほど弱々しかった

この人もきっと死ぬのだろう

ババアに限らず全員死ぬ

死ぬまでに会える時間はギュッとしたらもうあまりない

世話になった人が死ぬ前に

何かを成して恩返しがしたかったのに

最近の俺は痔で肛門から血がですぎて貧血だし元気がないしもうだめだ死にたいとキンクマハムスターのように小さくかわいくうずくまってばかりだ

最近の俺はずっとかわいい

ずっとかわいいんだ

俺が今死んだら葬式はどうなるだろう

きっと誰も笑わない

どうせ死ぬ

どうせ待ってても俺は死ぬ

じゃあ何をしよう

俺の葬式でみんなが笑うには何をしよう

羽田空港に着いた

家で待ってりゃいいのに女が迎えにきた

なんだか妙なきもちになってその夜は中に出そうとしたが

「まだちゃうかっ☆」と舌をペロっとだしめちゃめちゃかわいい顔をしていつもどうりケツに出したジジイのひ孫たちをウェットティッシュでふき殺して寝た


お葬式 関連ツイート

鷹通「双海がクシャミで肋骨にヒビ入ったらしく、笑うと肋骨が痛むのとで『皆俺の事笑わせないように生きて』とか言い出したので教室の中がお葬式みたいな雰囲気なんだが『ぶっふぉっ!お葬式みたいな雰囲気うけるいたたたた』って悶えててもうどうしたらいいのかわからない」
お葬式にお金を掛けないなら、きみとつきあってもいいよ あたしは生きてる人間にしか想いを抱けないから
今日も誰かのお葬式(喪服で家を出る)

コメントは受け付けていません。